敷地約15坪の敷地で区道と私道に面した「カドノイエ」。
時を重ね、家族のアクティビティが刻まれていく伸びやかな空間が完成しました。
駅からも近く生活に便利な土地は、周りに高い建物や住まいも多く、視線の抜けや開放的な空間を確保しにくいかもしれませんが、工夫すればできるのです。「カドノイエ」でもそのいくつかを実践しています。
「光庭からの柔らかな間接光につつまれた浴室、寝室」
1階の最も明るい南西の角、道路に面した空間は壁で閉じます。え?と思われるかもしれませんが道路に面しているので街を行きかう人々の視線も音も気になって開放的には生活出来ません。しかも周囲は3階建て以上が多いので午後には直接光が入りません。なら「光庭」を創って閉じてしまえ。その代わりに上部から1日を通して光が注ぎ込み、柔らかな間接光につつまれた浴室、寝室空間が完成しました。
「光あふれる2階のLDK」
2階の道路に面した南側は閉じます。え??と思われるかもしれませんが道路反対のお向かいさんと⁽こんにちは⁾してしまいます。最少開口にしました。そして1階「光庭」上部に面したテラス空間と南西の角に3階まで吹き抜けた光あふれるLDKが完成しました。テラス先には風の抜ける横ルーバー壁を設ける事で、プライバシーがありながら光と風の抜ける屋外空間が完成しました。ルーバー壁を敷地際に設置する事で、敷地一杯を開放的に生活できる効果は絶大です。
「3D屋根面と内部吹き抜け空間」
「カドノイエ」の敷地は2面道路に挟まれた角にあるので、他の敷地より開放的で光のあふれる土地ですがプライバシーが確保し難く、2面道路の斜線制限によって、建物の形状に大きな制限がありました。しかも敷地形状も隅切りのある不正形なので建築可能な形状は複雑怪奇。その複雑な形状のまま、最大容積を建築したので屋根面は複雑な3D屋根面となりました。その内部空間は彫刻的で、この場にしかない空間が建ち現われるのです。外からは「カドノイエ」としてシンボリックに建ち、内部空間はこれ以上ないくらい立体的に明るく開放的に完成しました。
「4層空間」
フラットに階を重ねただけでは、3階までしか確保できません。しかし1階を少し下げて、2階をスキップフロアにして、と工夫する事でロフト空間も確保できました。3層から4層へと層が増えるだけでなく、その増やし方によってより敷地を立体的に感じ、楽しめる生活空間が完成していくのです。
他にも出窓や室内素材の使い分け、塗装色の塗り分けなどにより、生活空間をより多彩で面白味のある空間へと引き上げ、時には非日常的にさえ感じられる空間が創られていきました。
― 中央線ケンチク会 -
メンバーが7回連続で「今週の家」を担当します。2015年より活動を続ける中央線ケンチク会は中央線沿線を拠点に活動する7組の建築家でつくられた会です。
場所 東京都北区
設計 コネクト一級建築士事務所 標由理+滝川淳
施工者 株式会社印南建設
竣工年月 2017年5月
木造(SE構法) 地上3階
敷地面積 49㎡
建物面積 78.5㎡
1階30.8㎡、2階30.8㎡、3階16.9㎡
家族構成 夫婦+子供1人
用途地域 第1種住居地域
撮影 石田篤
コネクト http://connect-arch.net/
中央線ケンチク会 http://chuosenkenchiku.com/index.html